経済産業省の統計から見る「コインランドリー業界」の現在

コインランドリー市場は、従来の「単身者向けの無人店舗」というイメージから大きく変化し、
現在では 共働き世帯の家事時短ニーズ大型洗濯の需要 を支える生活インフラとして位置づけられています。
経済産業省が2026年にまとめた「コインランドリー業界の現状と展望に関する研究会」では、
市場規模・利用者層・災害対応・最新トレンドなどが整理されており、業界の現在地を把握するうえで重要な資料となっています。

1. 市場規模と店舗数の推移

「コインランドリー市場は、近年堅調に推移している。」
— 経済産業省『コインランドリー業界の現状と展望に関する研究会』(2026)

市場規模は約1,155億円(事業者売上ベース)と推計され、
全国の店舗数は約25,000店舗前後とされています。
これは20年前の約2倍にあたり、コンビニ最大手の店舗数を上回る規模です。

一方で、厚生労働省が2013年まで公表していた営業許可ベースの統計では、
全国のコインオペレーションクリーニング施設は16,693店舗でした。
この数値が「公的に確認できる最後の店舗数」であり、
その後は経産省の産業統計や業界団体の推計をもとに把握する形となっています。

2. 成長を支える生活様式の変化

コインランドリーの利用が増えている背景には、生活様式の変化があります。
特に、布団・毛布などの大型洗濯の需要は非常に明確で、所得階層や住宅事情と密接に関係しています。

  • 若い共働き世帯が多い地域では、清潔志向と家事の時短ニーズが重なり、大型洗濯の需要が高い傾向があります。
  • 単身者の多い東京都心部では、住宅事情から「自宅で干さない生活」が一般化し、乾燥機ニーズが安定的に存在します。
  • 高層マンションの増加により、ベランダに洗濯物を干さない(干せない)生活が広がっています。
  • 家庭用洗濯機では対応できない大型衣類(布団・毛布・スニーカー)の需要が定着しています。

これらは総務省の人口統計や労働力調査とも整合しており、
「単身世帯 × 共働き × 都市部」という構造が、コインランドリー需要を支えています。

3. 出店競争が激しくなる地域では、慎重な判断が求められる

単身世帯が多い地域では需要が見込める一方で、
出店が続くことで競争が急速に激しくなる場面があります。
コインランドリー業界は市場規模が非常に大きいわけではないため、
十分な市場調査が行われないまま出店が進むケースも見られます。

新しい店舗が繁盛している様子があると、
その周辺に短期間で複数の新規店舗が出店されることがあります。
しかし、機器構成や店舗規模がほぼ同じ場合、
後から出店した店舗は売上を伸ばしにくい状況になることがあります。

こうした状況は、決して誰かが悪いという話ではなく、
市場規模に対して出店スピードが速すぎることが原因と考えられます。
結果として、販売店やメーカーの提案を信じて出店したオーナーが、
厳しい経営環境に置かれてしまうケースも見られます。

そのため、単身世帯が多い地域であっても、
周辺人口・生活導線・既存店舗の構成を丁寧に確認し、
「その地域に本当に必要とされる店舗かどうか」を見極めることが大切です。

需要がある地域ほど出店が続きますが、
長く続く店舗は、地域の生活に自然に溶け込んでいる店舗です。
単身世帯の増加は追い風である一方、慎重な判断が求められる場面もあります。

4. 最新トレンドと、利用者が求める付加価値

経産省の報告書では、スマート化や複合店舗化が進んでいるとされています。
これらは、うまく活用されれば利用者の利便性を高める取り組みとして評価されています。

① スマートランドリー化(IoT・キャッシュレス)

スマホアプリで空き状況を確認できる仕組みや、電子マネー決済は広く普及しています。
若い共働き世帯が多い地域では、こうした利便性が高く評価されています。

② ハイブリッド型(複合店舗)の位置づけ

カフェ併設やコワーキング併設などの複合型は、
立地条件が整った地域では、待ち時間を快適に過ごせる付加価値として支持される場合があります。
一方で、住宅街などでは利用者層が異なるため、効果が限定的となるケースもあります。
地域の特性に合わせて導入することが大切です。

③ カフェ併設についての補足

飲食を扱う店舗では、空気中の微細なホコリへの配慮が必要となるため、
日本では慎重な検討が求められます。
海外では成立している例もあるため、文化や衛生基準の違いが影響していると考えられます。

5. 用途地域の制限と、これからの都市構造

コインランドリーの出店には、用途地域の制限が影響します。
特に第一種低層住居専用地域では、生活利便施設であっても出店が難しい場合があります。

しかし、少子化による都市の縮小、AI普及による労働環境の変化、産業構造の転換など、
都市計画そのものが見直される可能性が高まっています。

今後、生活インフラとしての役割が強まるにつれ、
コインランドリーが「地域生活の基盤」として扱われ、
用途地域の制限が緩和される可能性も考えられます。

6. まとめ:公的データから見えるコインランドリーの現在地

経産省の報告書と厚労省の過去データを合わせて読むことで、
コインランドリー業界は以下のように整理できます。

  • クリーニング店は減少、コインランドリーは増加傾向
  • 市場規模は1,155億円前後で堅調
  • 生活様式の変化が需要を支えている
  • スマート化・複合化が進んでいる
  • 災害インフラとしての役割が拡大
  • 地域特性に応じた運営が重要になっている

公的データを丁寧に読み解くことで、
コインランドリーは「生活文化の変化を映す産業」であることが見えてきます。

※ 出典:経済産業省『コインランドリー業界の現状と展望に関する研究会』(2026)
※ 厚生労働省『コインオペレーションクリーニング営業施設調査』(2013)
※ 総務省『経済センサス‐活動調査』『サービス産業動態統計調査』

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